自動車の整備というのは車種ごとに大体ポイントが決まっているものですが、確実に劣化はするのに走行距離10万kmくらいまで(乗り換えや廃車になるまで)交換しないパーツもあります。10万km以上まだまだ現役で安心して乗る場合は整備のポイントが変わってきて定期交換の部品の他、劣化しているであろうパーツも予防として交換する必要があります。今回は一例を紹介します。
これは10万kmを超えたアウディです。新車から5000km毎にオイル交換をしてきてはいますが、さすがにエンジン音も新車のように静かでは無くなってきています。画像はヘッドカバーを開けたところです。奥にチェーンが見えます。これはカムシャフト駆動するパーツで潤滑はオイル、張りを調整するのもまたオイル(油圧)です。
これがチェーンテンショナーです。アウディの場合は直4だと一個、V6以上は二個使っています。
それでは外していきます。カムシャフトにマーキングしておきます。チェーンはカムシャフトを駆動するだけでなく、カムシャフトタイミングも保持しています。
カムシャフトを外すとチェーンテンショナーが外れます。10万km程度でここまでする整備工場はないのですが(笑)、ま、見ていてください。
これです。テンショナーのパッドと呼ばれる部分です。プラスチック製です。チェーンを直接押している部分です。オイルで潤滑されていると言っても10万kmも走ればこんな感じで磨耗しています。異音が出ても当然なんです。これは上側。
これは下側。同じく磨耗しています。
ちなみに新品はこんな感じです。
構造はこんな風になっています。ヘルパースプリングはありますが、実際は油圧でチェーンを張っています。油圧が落ちてくるとチェーンが弛み、ノイズが発生します。油圧を発生させるエンジンのオイルポンプも走行距離に応じて劣化はしてきますし、油路も古くなれば汚れで狭くなっていきます。
これはテンショナーを裏返した状態。画像中央に楕円形の小さなフィルターが見えます。実はテンショナーの油圧はここを通って押しているだけで、実際は綺麗に循環されません。ということはオイル交換してもテンショナーの内部のオイルは交換されないわけです。アウディのエンジンで「ジャー~」とか「ジー~」とか異音が鳴っていたら間違いなくチェーン系のトラブルです。
最近の車はタイミングベルトではなく、タイミングチェーンですが、アウディに限らずBMWにしろベンツにしろテンショナーのパッドはプラスチックなので、今回のアウディのようなケースは他人事ではありません。
結局、森本は何を言いたかったのかというとエンジンの異音は必ずどこかでトラブルが発生しているということです。