在庫車の512Mは各部の清掃、整備中。今日はこの車について勉強してみます。
テスタロッサ→512TR→512Mと継承されているわけですが、名前の「M」とはイタリア語のModificata(Modified)という改良型という意味。
特徴的なタービン型18インチの2Pホイール(スピードライン製)。 冷却効果を狙ったもので左右が非対称になっています。前後もサイズがもちろん違うのでこの画像で言えばフロントの右専用のホイールということになります。348も同じく左右非対称のホイールなのです。この時代のフェラーリは変な所にお金がかかっているものです・・・。 時々ウェブの写真などで逆向きにホイールが取り付けられている348を見ます。「俺のは大丈夫か!」という方は見せにきてください(笑)。 ちなみにブレーキキャリパーまでもがTRよりも軽量化されています。
外見よりも一番改良されているのが実はエンジンであり、テスタロッサと同様の水平対向12気筒48バルブ(4,942cc)ではありますが出力が440馬力。 圧縮比と燃焼効率のチューニングの為に燃焼室の形状変更、ピストンが鍛造アルミに、コンロッドもチタン鍛造に変更されているのです。このチタンコンロッドは本来512TRに採用されるはずだったのですが、開発が間に合わず(コストがかけられなかったというのが本当らしい)この512Mで採用となりました。 フェラーリ最後のミッドシップV12はTRからは外見以上のチューニングが施されています。
おまけ
フェラーリの180度V型って水平対向12気筒なんじゃないの?って方がいらっしゃると思いますが、それはちょっと違います。(どれがVでどれが水平?みたいなややこしい事はおいておいて) エンジンの構造上、対向ピストンエンジン(ボクサーエンジン)とフェラーリV型の違いが下の図です。
両方ともに低重心を狙ったものですが、右の水平対向エンジンの場合は左右のピストンが同じ動きをします。左バンクのピストンが「上死点」に達したときは右バンクも「上死点」の位置になります。向かい合うピストンの動きがボクサーがパンチを交換しているのと似ているので「ボクサーエンジン」とも呼ばれます。個人的に全然ボクサーの動きに見えませんが。画像を見てわかるように中心のクランクシャフトピンが水平対向はピストン一個づつ必要なためにどうしてもクランクシャフトが長くなります。ただピストンの往復運動のバランスにより振動を打ち消す事ができます。 一方、「疑惑のV型」フェラーリ製180度V型ですが、左右のピストンがクランクピンを共有していて左右ピストンがひとつの動きとして往復します。バランス面では先の水平対向より圧倒的に不利になりますが、クランクシャフトの長さを短くできて剛性もを上げやすく、クランクケース圧力が上がらないので高回転に有利です。フェラーリがボクサーではなくこの構造を採用したのは耐久性とコンパクト化、高回転を重視した理由があったのです。
・・・・・と偉そうに書いておきながら、同じ180度V型を積む512BBがなぜベルリネッタ・ボクサーなのか。それは未だに謎です。
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